ツールド東北牡鹿半島チャレンジグループライド 自転車で感じる被災地の今
自転車の力で被災地の復興を支援するツール・ド・東北。
今年も9月17日と18日の週末に開催されました。
毎年新しいコースが加えられながら4年目を迎えているのですが、今年の新コースは牡鹿半島リアス式海岸の入り江や金華山を眺めながらグループで走る100キロというもの。
「グループライド」というのは、走行管理ライダーのガイドに従いながら、約10人が1グループになって一緒に走るもので、いわゆる、タイムを競わない「ファンライド」スタイル。
というわけで!!
その「牡鹿半島チャレンジグループライド」(17日開催)に参加してきました!
朝8時半。霧がかかって蒸し暑い天気模様。
でも、かんかん照りよりこれくらいの曇り空の方が走りやすいのかも?
スタートしたらだんだん空も晴れて来て、道の状態も超快適、周囲の田んぼは緑のグラデーションに色づき、本当に気持ちよい。
美しい東北の風景の中を走れる幸せであります。
このライドは、コース上にある数カ所の休憩ポイントを巡りつつ、地元の方から被災地域の「いま」についてお話を聞きつつ、さらには、地元食材、旬の美味しい食べ物を頂きながら100キロを走ると言う贅沢なライドなんですね。
まず最初のポイントは、約20キロ走った後の女川駅前エイドステーション。
完成したばかりの女川駅舎。ウミネコが羽ばたく姿をイメージしているとのことですが、明るい木の色が良い感じ。
女川駅前には足湯もあるし、駅舎の中には温泉もあったりでおもてなしあふれる設備がステキな駅でした。
駅舎の中に温泉があるって斬新。でも、電車に乗るギリギリまで温泉に浸かっていられるって、寒い冬には幸せすぎるかも。
さて、チャレンジライドのエイドスポットとして、ここで頂く地元食材は笹かま。
語り部さんのお話を聞きながら、仙台の名産品である笹かまを頂きます。
震災時には大きな被害を受けた女川は、まだまだ嵩上げの工事中の箇所も多く観られましたが、駅前商店街が昨年12月にオープンしたりなど、徐々に回復している様子が伺えます。
嵩上げ工事中の駅周辺。
こちらは女川駅改札。バス停の趣ですが、JRの駅構内です。
17日の100キロライドの休憩所は全部で5カ所。
女川駅のあとは牡鹿半島に入り本格的な山岳コースの始まり。
おしか御番所公園、おしか番屋、旧萩浜支所跡地、県慶長使節船ミュージアムで止まりながら進みます。
御番所公園以外の4カ所で語り部さんからのお話を聞かせて頂いたのですが、5年前の震災を受け止めながらも、地に足つけながら「いま」を力強く暮らしている様子に、改めてこちらの気が引き締まる想い。
御番所公園からの金華山の眺めは美しかったなぁ。
霊山である金華山は、3年連続でお詣りすると一生お金に不自由しないと言われるそうでー。
せめてあと2年、同じようにこのルートを通りたいものですw
さて、途中のコバルトラインは斜度もキツく、結構な坂道で苦しいところ。
今回、コバルトラインの一部を一般車両の通行止めのおかげで車を気にする事なく眺めを楽しんで自転車に乗れたのは贅沢でありました。
つぎのエイドはお昼に合わせた鮎川エイドステーション。
鮎川は捕鯨や関連産業で栄えた街。なのでお弁当のおかずはクジラのステーキ。
クジラのステーキ、そばのグリルでBBQしたものを詰めてくれるんです!
メカブのお味噌汁も、アサリとわかめの和え物の味付けも地元食材がふんだんに浸かってあり、とても美味しかった。
そして語り部の方から、当時の状況、そして今の復興状況についてお話。
今はこんなに穏やかな海からは、津波の恐ろしさはとても想像できないです。
後ろを振り返ると今は駐車場になっている更地。
向こうの方の家は、波が到達しなかったため幸い残ることが出来たものの、手前の家は全てさらわれてしまったとの事。
ここにも全て家が建っていて、人の暮らし、家族の暮らしがあったのだと思うと本当に切ないですよね。。。。
萩浜(おぎのはま)エイドステーション。
ここは、震災前は石巻市荻浜支所が建っていた所だそうです。
津波が発生した時に、保育園の子供たち含む付近の住人さんを2階に避難させ、最後は屋上にハシゴを渡して避難して一夜を明かしたと言いいます。
荻浜は日本のカキ養殖の父である宮城新昌氏をたたえる顕彰碑が立っていたのが、津波で真っ二つに折れてしまっていて、その石の大きさや厚さを考えても凄まじさが伝わります。
テントの場所は当時から駐車場だったそうですが、向こうに広がる土地には当時は60軒弱の家並みがあったとのこと。
ここで生まれ育った方たちにとっては、本当に全く違う風景になってしまったんだろうなとお察しします。
石巻から女川へ向かったライドの途中、道路の脇にはたくさんの仮設住宅が今も残っていました。
語り部の方たちが一様に口を揃えて語ってくれた事ですが、「住居は整い始めてきたけれど、仮説住宅が無くならない限りは、復興は終わったとは言えない。そして、今からは、心のケアが本当に大事になってきている」と。
仮説に住んでいる限りは、根っこをはやして生きていこうと心に決められる土地や場所に出会えていないという事なんですね。
復興への道はまだまだ続くと感じる瞬間。
最後のエイドは、宮城県慶長使節船ミュージアムの隣にあるサン・ファンパーク。
今から400年前にここ石巻から出帆した慶長使節団の記念館。
ここでは魚介のBBQとずんだシェイクを頂きつつ、最後の語り部さんからのお話。
コチラは使節船のレプリカ。
なんと、震災の津波にも耐えたそうです。
ここが最後のエイド。あとはゴールまで残り10キロちょっと。ここら辺から雨が降り始めたのと、車の多い市内を走るので、車に注意しながらゴールの石巻専修大学を目指して走行完了。
走りごたえのある100キロコースでした。
美しい南三陸の風景を眺めながら走れると同時に、エイドごとの語り部さんや地元のボランティアの方たちとの交流やふれあいがあったり、地元の美味しい食材を頂いたり、本当に盛りだくさん。
「応援してたら応援されてた」が大会のテーマなのだけれど、自転車で被災地を巡りながら現地の様子を肌で感じている中で、現地の皆さんの元気なパワーに自分たちが元気になっていくのをしみじみ感じた100キロ。
人は、人との触れ合いや交流によって気づきを得る事が出来るという事を改めて感じる事ができました。
震災で失ってしまったものは戻って来ない中、いろいろな想いをお互いに抱えながら、それでも、ひたすら前を向かっている皆さんの姿にどんなに勇気をもらったことか。
大事なのは「今」と「これから」ということを強く感じた1日でした。
大会に関わって下さったみなさま、ボランティアの皆様、そして一緒に走ってくれた仲間のみんな、本当にありがとうございました。
こちらの動画では、この100キロのダイジェスト版として雰囲気を感じる事が出来るかと思います。