ノーマンフォスター設計「やぐら」のある鎌倉邸宅見学レポ
先日、鎌倉「やぐらのあるノーマン・フォスター設計の建物見学ツアー」に、ご縁あって参加して参りました!
これは「東京のちいさな美術館めぐり」という本を出版されたフリーライターの浦島茂世さんが企画してくださったものでして、参加されたメンバーの皆様はスリバチ学会、高低差学会の皆様、建築やインテリアデザインを生業となさっていらっしゃる方など完璧「プロフェッショナル」な方ばかり。
建築を見て歩くのは大好きだけれど「わー、すごいなー。きれいー。」というお子様レベル感むき出しで建築ど素人のここのつにとっては、非常にもったいない「豚に真珠で猫に小判」な一日でございましたが大変に楽しみましたのでそのレポなどさせて頂きたく!
ちなみに、ノーマン・フォスター氏について簡単に説明しますと。
氏はApple社新社屋を設計する爵位を持つ貴族で大企業を経営もするイギリスを代表する建築家。
フォスター卿の建築術と言うドキュメンタリー映画も作られていますが、氏が個人宅を設計するのは珍しく、今回の「お宅拝見」は非常に貴重な機会との事。(当然ですが、通常個人宅には家主さんが住んでいるので、空き家でない限りゼッタイに見ることは叶わないという制限もあります)
また、この扇が谷にあるこの場所についてですが、中世には無量寺があり、次には名刀工・正宗の血を引く刀工綱廣の屋敷が、さらに大正時代には三菱財閥岩崎小弥太の別荘が建ち、2000年にはセンチュリー財団がノーマン・フォスターに依頼した個人住宅を建設したという平民には足を踏み入れる事はほぼ叶わない歴史を持つ土地とのことでした。また、敷地内にはたくさんの「やぐら」があるというのも大きな特徴でもあります。
※やぐらとは・・・
やぐらは鎌倉の周辺にある鎌倉時代中期以降から室町時代前半にかけて作られ、または使用された横穴式の納骨窟または供養堂である。 現在では風化で苔むした洞穴にしか見えないが、建立当時の内装は豪華である。
(by Wikipedia)
現在はいろいろな経緯を経て鎌倉市に寄贈されており、今秋には改築工事に着工し、来年2016年の秋には「鎌倉歴史文化交流センター」として一般開放されることになるそうです。
当然ながら、一般解放されるためにはバリアフリー化を含め様々な改築をしなければならないので、現在のように個人が「住まい」として利用していたままの状態を見る事もこの秋までの限定となります。(鎌倉市民を対象に担当部署といろいろな条件が合う場合に見せてもらえるとのこと。)
・・・と、ウンチクはこれくらいにして。
まずは外観。
これ、個人宅なんですね、はい。
笑っちゃいます、このサイズ感。
そして、この門壁の感じとか、ふつー改築なんかする前から博物館、ですよね??
で、ここ入ったすぐが当然ガレージなんですが。(上記写真の中央部分の内側ですね)
天井が高い。。。。
この贅沢な空間の使い方。。。
このガレージだけで、普通の住宅なら何戸分建つのやら、です。
庶民と貴族の壁はありとあらゆる点から高く、そして厚そうです。
そして、光ファイバーで照らされる石壁の廊下を通ってリビングに行くのです。
素晴らしいお庭が眺められるリビングです。
世界から取り寄せられた資材や石がそこかしこに使われているので全体に「欧米風」を感じるのですが。
でも、こんな風に石が敷き詰められていたら、家の中でも靴を履いて過ごすってことですよね?
そうか、裸足でペタペタしたら夏場はヒンヤリして気持ちよいのかな。
でも全館空調だから、ヒンヤリとか言う感覚も不要かも?
あーーー。育ちが庶民だと、とにかく貴族的な住まいでは決して寛ぐことが出来ないだろうってことが体験しなくてもよーくわかります(笑)
こちらの邸宅は2つの建物からなっているのですが、鎌倉市に寄贈されてからは便宜上A棟・B棟と呼ばれています。
で、A棟の建物延べ床面積は1137.77㎡。B棟は少し小さくて267.56㎡(大きいとか小さいとかの基準が狂います。。)
こちらは、B棟のリビング。
向こうに見えるのはやぐらではなく防空壕跡か井戸だとか。
(何にせよ、歴史がありすぎ。ちょっとコワいw)
これは「やぐら」ですねぇ。
さらに、この敷地内には、岩崎小弥太氏が鎌倉時代の鍛冶職人(刀工)正宗のために作った稲荷社があったのでした。それが、この「合槌稲荷」。
鎌倉市に寄贈された時、政教分離のためにお社は葛原岡神社へ移されました。
なので、今は空っぽです。
なんだか・・・、ですよね。。。。
ただし、ここからの眺めは大変に素晴らしく、本当に気持ちがよい。
ウグイスやホトトギスの鳴き声が絶えずあちこちから聞こえてくるし、とにかく清々しい気持ちになります。気が良い、という感じでしょうか。
向こうに見えるのは「B棟」ですね。
さて、ここら辺までは、来年秋の改築後にも一般公開されるエリア。
でも、ここのつとしては今後の改築によって取り壊されて無くなってしまったりクローズされて一般人の侵入が不可能になる所をしかとご紹介しておきたく!!
まずは、ウオークインクロゼット含むお化粧室
この部屋の横には、何十枚ものワイシャツが一着ずつ収納できる棚がずらーっと並んでいまして。ここのつ、名画『華麗なるギャッツビー』で、あのギャッツビーが色とりどりのワイシャツを部屋中に撒いた名シーンを思い出しましたです。
こちらはお風呂。
別のお部屋のお風呂。
なんでもイタリアから取り寄せた石らしく。イタリアっぽいですねー、このブルー。奇麗です。このカーブした磨りガラスの左手にバスタブがあるのですが、バスに浸かって眺められる景色は下記となります。
いいなーー、いいなーーーーー。
そして、こちらが地下にあるボイラー室というか発電室。
でかい部屋にぎっしり発電装置が設置されていて、これは個人宅ではない「ビル」のレベル。
厨房。
北欧の什器らしいです。ここ、改築後はお手洗いになってしまうとのこと。どうも、この厨房施設だけで1000万以上はするらしいので(同行のインテリアデザインの方曰く)それが取り壊されちゃうって、わー、もったいなーい。
そして金庫。
金庫ごと持ち逃げされないように、金庫をまず設置してから壁が作られたんですってー。
極めつけがこのプール。
写真で見るよりも深く、結構長さもあります。20mくらいかな??
きれいなブルーのタイルで、泳いだら水が真っ青に見えて気持ちよいでしょうねぇ。。。
しかし、このプールの場所が階段を下りた地下であるため、バリアフリー観点から活用できず、「物置」になるそうです。このプールが物置ですよ、ほんと。。。。
また、B棟の屋上がまた素晴らしいのですが。。。
三方が山に囲まれ遠くに海が眺望できる屋上も閉鎖され、スタッフのみが出入りできるスペースになるとの事。
とにかく何もかもが「圧倒的にスゴい」の一言しか出せないお宅拝見のツアー。
はー。
お金をたくさん持っている人ってとことんスゴいんだなーという事実を目の当たりに知る事が出来、自分の思考と想像力の幅を一気に拡大させてくれた、とても良い機会でした。
一方で「こりゃ広すぎて、もし住んだとしても自宅の中で居場所が見つけられなくて寛げないよ。ワタシ、庶民で良かったわー」という結果オーライな気持ちをどこかで感じて終われたのも良かったかもしれませんw(負け惜しみバンザイ)
来年の秋には博物館として一般公開されるようになるのは、素晴らしい事ですよね。
一方で、数々の素晴らしい工夫を凝らした部屋やしつらえ、スペースなどが取り壊されてしまったり、一目を浴びないままになる場所が生まれるのも残念な事です。
両立、と言うのはしみじみ難しいものですよね。
両方の姿を見る機会を頂けたご縁に改めて感謝したいと感じました。
コチラのフォスター事務所のHPからは、竣工時の姿も見られますし、
Kamakura House | Projects | Foster + Partners
今回のツアーを企画して下さった浦島茂世さんのご本は下記となります。
是非お手に取って頂きたく。