小網代の森ボランティアウォーク参加で学ぶ自然と人間の関係
去年2014年の7月下旬のことになりますが、ほぼ日刊イトイ新聞上で「小網代の森へ遊びにいくよ!」として連載された特集記事がありました。
この記事を読んで以来小網代の存在がずっと気になっていたのですが、この度、やっと念願かなって「小網代の森ボランティアウォーク」に参加して参りました。
小網代については、もはや私がアレコレ言う前に、上記の「ほぼ日記事」を読んで頂きたいのですが、何が面白くてこの小網代がスゴいかというと、この「流域」という考え方と、その流域がここでは丸ごと残されているという事実。
なんでも、川の一番上流から河口までを「流域」と言うそうです。
そして、小網代の森は全長1.3キロの「浦の川」と川の周辺にある70haの森(多摩三浦丘陵から三浦半島の南端まで)、そして河口の小網代湾で成り立っていて、しかもこの「流域」がまるまる市街地や道路で分断されないで残っているということ。そんな場所は関東圏ではおそらく小網代だけだそうな。
ここを丸ごと残せば、自然を守り、自然を学ぶ一つのお手本になるのではないかと言う考えから、1984年に慶應大学名誉教授の岸由二先生が上記のNPO法人を立ち上げられたそうで。
【小網代の自然とは】
神奈川県三浦半島の先端、相模湾に面したリアス式の入り江と谷、それが「小網代の自然」です。
標高70〜80mの台地を、いくつもの小さな川が刻んだ谷、深い森、広々とした湿地、大きな干潟、そして南国の香り漂う湾。
頂点から相模湾外洋まで約3km、森と湿地と干潟と湾とを川が結ぶ、ひとつの流域がまるごと自然のまま残された、きわめて貴重な自然です。
小網代の自然の中心を成す「小網代の森」は約70ha。東京ドーム15個分の広さ。1.2kmの「浦の川」がつくった流域がまるまる森と湿地のかたちで残されています。川の最上流部から河口の干潟まで、舗装路も家もありません。首都圏では唯一の「完結した自然状態の流域=集水域生態系」。これまでに2000種以上の生きものが確認され、絶滅危惧種も多数生息している、生物多様性の宝庫です。
まー、そこから約30年間、様々なドラマやストーリーがあるそうなのですが、詳細はほぼ日の記事を読んで頂くとして、私はこの「流域」というエリアや、山と川と海が繋がっている象徴である「アカテガニ」について、これから季節の折々で定点観測をしてみたく、冬のまっただ中とは言え、まずはボランティアウォークに参加した次第です。
このボランティアウォークというのは、
・毎月第3日曜日に実施
・午前9:30三崎口駅前集合、12:00現地解散
・雨天中止
・誰でも無料で参加可能(山歩きに適した汚れても良い服装で)
・事前申し込み不要で当日受け付け時に名簿記入
(団体の場合は事前連絡のこと)
という、参加する側にとって非常に敷居低く間口が広い活動です。
1月18日晴天の日曜日。
三崎口駅前に着いたらすでにスタッフの皆さんがロータリーにて待機。保険の加入のために名簿に記入して出発。
途中、三浦野菜の路地販売のお店を横目で眺めつつ、小網代入り口まで駅から歩きます。約20分くらい。
このボランティアウォークでは、スタッフの方と歩きながら有害植物除去やごみ拾いなどの体験ボランティアをするのです。
歩きやすい様にボードウォークがきちんと整備されている中、要所ではスタッフの方が小網代の森の自然の様子や保全事業の状況を解説して下さいます。
三崎口方面から来る場合、その引橋入り口が小網代流域の一番の高台になりまして、そこから標高約80メートルをどんどん下る訳です。
急斜面もこのような歩きやすい階段に整備されていますが、写真を見てわかる通り、結構下る感覚があります。
この日の体験ボランティアは、散策路脇に生えている「アオキ」の苗を抜きながら歩くこと。耐陰性が強いアオキはすぐに繁殖して、増やしたい下草の成長に必要な光を遮断してしまうために「有害植物」認定。
この程度の大きさで抜くべし。大きくなった苗木を根っこから引き抜くのはとても大変。
みんな、アオキ抜きに集中するあまり、どんどん散策路を外れて。。。
ちなみに、なぜ下草を生やしたいかですが、下草を生やす事で土が保水力を増し、結果として多様な植物が生息する環境になるとのこと。
そして、土が乾燥しているとあっという間にササで荒れ放題になってしまうそうで、この日もボランティアスタッフの方々が200平米のササを除去されてました。
(撤去作業中)↓ ↓
(撤去後)スッキリ!!!!
いろいろ聞いていると、とにかく「水の管理」と「光を取込む事」に重点が置かれていることがよくわかります。
杭で堰を作って水路を整えて水を高い所へ誘導すると、雨が降った時に水があふれて湿原となる。そして、多様な水生植物が繁殖し、ホタルの森が生まれ、オギ・アシ原が生まれる。川が伸びれば、海からの魚(ウナギ、アユなど)が川に上がって来られる様になる。すごい循環が生まれるんだなと感心します。
こんな風に堰を作ってる箇所があちらこちらに見られます。
また、場所によっては木の伐採も大胆に行い、川に光を取込むことでアユの餌となる藻が生える様に工夫しているとか。
こつこつと整備していく事で海と森が川で繋がり、多種多様な植生がこの小さなエリアに集結している生き物にとってのユートピアのような場所になっていくんだろうなと想像してしまいました。
また、小径の途中「まんなか湿地」という乾燥地と湿地の入れ替わるポイントでは乾燥地に生えるハンノキと湿地に生える蛇柳が一度に見渡せるなど、環境によって変化する山の植生を一望できて本当に面白い。
このまっすぐに伸びているのがハンノキ。乾燥地タイプ。
このクネクネとして生えているのが蛇柳。湿地タイプ。
心なしか、地表の様子も違う様な?
それにしても、湿原化すると、土の中に埋もれていた昔々のタネが何十年かぶりに復活して芽を出し、多様な植生が復活すると言う話には驚きました。
植物は自分で自由に動けない分「待つ能力」があって、自分の環境が適した時に発芽するというのです。
子どもに限らず人の成長についても「待つ」ってとても大事な事。
この話は山や森や種子の話だけではなくて人が育つ過程に当てはまる重要な点だなぁと思いながら聞いていました。
ただ、人間は植物と違って自分で動けてしまうことが「待つ」ことを難しくしてしまっているのだけれど。
小網代湾のすぐ手前の笹がきれいに撤去された場所は、オギ、ヨシの原となっています。ここは、いずれは尾瀬の様になるのかもしれないと思うと、もうワクワク過ぎw
いろいろな事情の後、小網代の森をこのように本格的に整備し始めてからまだ4年ちょっとだそうです。
小網代の様なこじんまりした自然は、人の手が入らないと荒れ放題になってしまう反面、人が適度に手を加える事で多様性が育っていく。それが目の当たりにできる小網代の森ってすごいと行ってみて改めて感銘を受けました。
そして、人がその中で「自然」と積極的に関わっていく中で共に学び合い、共に育ち合うって、それこそ自然なこと。
ボランティアウォークの最後は、小網代湾で解散。
お弁当を食べて、自由に散策して帰宅。ここまでで、約2時間くらいかな。
これからの小網代は、春はフデリンドウにオオシマザクラとヤマザクラ、そして4月末から5月は柳に絡まった藤が咲き、5月末にはホタルが舞うとのこと。
夏にはアカテガニの産卵もあるし、本当に1年を通して飽きない森なんだろうなと、これから始まる四季の巡りがとても楽しみ。
是非ご家族でも行かれてみたら良いとオススメです!
小網代の森について
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