小笠原への唯一の移動手段である船中24時間。これが実は「価値」なのだ
小笠原での時間の豊かさについて2回に分けてお伝えしました。
最後に、父島行きで一番ネックとなっている(であろう)「24時間の航海」について
この船24時間を抜きにして小笠原への旅は語れません。
なぜなら、島への交通手段は船しかないから。
正直言って私も以前は「片道24時間かけて行く価値は一体あるのか・・・」と躊躇していました。
が、実はこの船旅こそが小笠原の魅力を倍増させる大事なエッセンスということを知りました。
何がそんなに良いのか。
1、船内24時間、案外飽きない(むしろ忙しい)
仲間とお喋りしながらお昼を食べ(飲み)、海を眺め、デッキや船室でごろごろしながら本を読んだり。
夕暮れ時になったらデッキから夕焼けを眺め、空が全て真っ暗になるまで余韻を味わって、晩ご飯。
晩ご飯が終わってしばらくしたら、再度デッキへ。
ベンチにゴロンと横になり、さながらまるでプラネタリウムのような満天の星空を見上げる。
天の川、北斗七星。蠍座、カシオペア。もちろん流れ星もたくさん。
あんな星空、普段は絶対見られないです。
眠くなったら寝る。翌朝は4時過ぎ起床で朝焼け〜日の出を拝んで。
その後は展望ラウンジで本を読みながらコーヒーやスープ(自販機)を飲んだり。
皆が起きてきたらおしゃべりして、眠くなったら二度寝する。
することが何もないようなこんな時間は、オトナになると、作りたくても作れない。
実は贅沢の極みではないかと思うのです。
2、船内むちゃくちゃ快適
今回、私たちは2等寝台を選びました。
これは、2段ベッドが並び、4人一つのコンパートメントスタイル。一人一人カーテンで仕切りがあるので、個室感は十分あります。
枕元にコンセントとライト。枕・掛け布団あり。
当然ですがベッドはフルフラット。
(これ、よく考えてみてくださいね。飛行機でフルフラットって言ったらビジネスクラス以上のランクですw)
お手洗いと洗面所は別に設備され、さらにはシャワールームもあります。
シャンプーその他ドライヤーも完備。
どこも清潔。(混んでない)
このシャワールームのおかげで、海風でべとべとになった髪も身体もストレスフリーにシャワー浴びられます。(しかも何回でも)
ショップ(コンビニ)、レストラン、ラウンジ(喫茶)、自販機と調理可能(給湯など)、キッズルーム、ミニサロン
人が集まれる様な椅子やテーブルを用意したスペースも至る所にあるので、交流がほどよく可能な仕掛けあるのです。
個人差あるとは思いますが、個人的に、不自由は何も感じませんでしたね。
3、船内はほぼ電波圏外
竹芝出航してから3時間ほどで携帯は圏外に。
ここからのデジタルデトックスが実はとても良いのです。
普段、意識しないで携帯やPCを立ち上げている自分。
実はこの「どこでも繋がることができる」環境が、いかに自分からいつの間にか「何か」を奪ってしまっていることか。
電波が入らない時間の中で自分がする事(寝る、食べる、本を読む、おしゃべりする・・・)は、自分の意志で選び取る時間なんですね。
「いつの間にか奪われてしまっている」時間があるという感覚にリアルに気がつくことが出来たのは良かったと思っています。
4、小笠原に近づいて来た時の海の色
徐々に近づいてくる島の影。
海の色が、見た事のない様な深い群青色なんですよ。
これは感動します。
5、父島を出発する時のお見送りが心に響く
島でお世話になった方達(ホテルのスタッフやツアーガイドさんたち)がお見送りに来てくれるんですね。
無事の帰路を祈って太鼓の演奏もあります。
みんなの声は「いってらっしゃい」なんです。
見送りのための船が最後までたくさん並走してくれて、飛び込みジャンプのアトラクションのサービスまで。
これが、すごくて楽しいんだけど、同時にとても切ないんです。
島での時間や素晴らしかった思い出も全部思い返されて、つい涙ぐんじゃいました。
6、とは言え、小笠原へは「覚悟」がないと行く事ができない
覚悟と言うと大げさだけど、ある意味ほんとに「覚悟」がピッタリくる気がします。
だって、小笠原に行くとすると、片道24時間と現地停泊時間あわせて最低6日間の休暇が必要なんです。
そこに加えて更に必要な「覚悟」とは、小笠原との交通手段は船のみということ。
台風などの気象条件によって、万一帰路便が欠航になったら島に缶詰になります。汗。
結局、仕事やスケジュールに問題ない人でないと行けないということです。
(もちろん、気象条件で東京→父島便自体欠航になることもありますし、その場合は楽しみにしていた気持ちをどうしたら良いのか、、、ですよね)
ですが、だからこそ!
船の中は、「そんな小笠原へやっぱり行くよね!」的な旅行者たちの仲間感がスパイスされた「一体感」がゆるやかに漂っているとも感じます(私見満載)
・・・とまぁ、船旅の特徴を挙げましたが、とにかく、これは飛行機や電車移動の24時間とは全く別もの。
船旅はすでに「小笠原旅」の大事な一部。決してムダな時間ではないのです。
むしろ、この24時間は、島時間に自分を丁寧に慣らしていくためのウォーミングアップ・島から都会に徐々に戻っていくための大事なクールダウンの時間なのだと感じました。
小笠原が好きになる人は、この船時間を含めた全部が好きなんじゃないかと、今となっては思っています。
24時間の船がなぁ・・・って思ってる皆さん、それ、ホントとんでもない勘違い!勝手な思い込みですよ!
この船旅があるからこそ、小笠原は楽しいのだ。
※小笠原観光局職員による船旅実態調査記事として合わせてどうぞ